映画感想『猫の恩返し』
ずっと『猫の恩返し』を見ないようにしていた。
なぜかというと 『耳をすませば』が好きな人間だったから、バロンが違う作品に出て違う設定になっているのが受け入れられなかったからだ。また絵柄が変わっていることもに受け入れられなくて、それからずっとずるずると引きずって今に至っていた。
まあ当時は融通の利かない、こだわりの強い子供だったんですよ。
劇場公開が2002年なので、けっこう長いこと突っ張っていたんだな。長い。
でも突っ張るのはもういいかなと思って、この年になってようやく見てみた。
見た感想としては、
バロン、なんであんなかっこいいの…?
あと、めっちゃイケボ。
宣伝で「猫の国」というワードが繰り返されていたので、見る前はバロンも猫の国の住人という設定になっているのかとず~と勘違いしていたのだけど、バロンはこの映画の中でも「猫人形」という設定だった。何だ…よかった…。数十年の勘違いが解けました。
紳士的なたたずまいがかっこいい。お姫様だっこ、かっこいい。ラストの「しばしの別れ!」といって去るシーンもかっこよかった。
バロンのセリフでビビっときたのが、
「あいにく、不自由な暮らしも気に入っているのさ」というセリフで、足るを知っているというか…だからこそ余裕さが出ているのかと思ったり…上手く言葉にできないだけどそういうものが感じられて、とにかくかっこよかったのです。
もっと早く見ていたらよかったね…。
『猫の恩返し』全体の感想としては、あっさりとした映画だったなあ、という印象。
どうしても『耳をすませば』と比較してしまうのだけど、あちらは思春期特有の悩み・何かやらなくちゃいけない焦燥感、当時の「わかるわかる」感覚が見ているこちらを苦しませるけど(でも好き)、『猫の恩返し』はそういう見ているこちらの精神にダイレクトアタックをかますようなものではなかった。
主人公ハルちゃんは好きな男の子はいるけど気になる程度っぽかったので、実は彼女がいてショックを受けた出来事もすぐに流れて行ってしまった。現実に強い不満があるから異世界に行ってしまう…そういう流れで「猫の国」に行くのかと予想していただけに、ちょっと肩すかしを喰らってしまった。
彼女がもっと強く「猫の国行き」を断っていれば、案外連れて行かれなかったんじゃないかとも感じたんだけど、じゃあ自分が「猫の国に招待しますよ」と誘われた場合、「ちょっとのぞくだけのぞいてみようかな…」とも思ってしまうので、ハルちゃんのことは責められない。
そう思ってしまうところがコピーの「猫になっても、いいんじゃないッ?」なのかもしれない。そうして猫になってしまうんだろうな~。でも猫の国の猫になったとしても『千と千尋』の豚になってしまうよりかは悲壮感を感じないな。あの豚リアルだから?
キャラクターも実はあのキャラが黒幕だった…というような二転三転することもなく、ラストもあっさりと終わった。悩みが深く描かれていなかったから、冒険を通して成長したと感じられず、ハルちゃんの冒険は夢の出来事のように終わってしまった。
う~ん、あっさり。
でも、このあっさりさがいいかもしれない。
確かに物語上、起承転結は必要なんだけど、主人公が悩んだりひどい目にあったり裏切られたりするのを見るのって、主人公もしんどいし見ているこちらも疲れてしまう。
その分、この『猫の恩返し』はジブリらしい冒険があってストーリーの起伏もきちんとありながらも、あっさりしていて見やすかった。
だとすると特別嫌なキャラもいないしまったりとした雰囲気に包まれているし、『猫の恩返し』という作品は優しい物語なのかもなあ、と思いました。