読書感想『太陽と乙女』
私が初めて読んだ森見登美彦氏の本は、母が図書館から借りてきた『夜は短し歩けよ乙女』だった。ハイカラな表紙のハードカバー本を読んでいる母が突然笑い出していたのだ。
一体どんな本なんだと自分も読んでみたら、私も笑ってしまってその不思議な世界にどっぷりとはまってしまった。独特な小気味の良い文章は、文字を読んでいるだけで笑えた。それから『太陽の塔』『四畳半神話体系』『有頂天家族』…と森見氏の他の本も手を伸ばして言った次第です。
唐突な思い出話は止めて、今回読んだのは森美氏のエッセイ本。
色々な媒体で掲載されていた「エッセイ全集」ともいうべき本で、読んでいてなかなかのボリュームがあった。一つ一つは短くても濃度が濃いのでさっと読み終えることができない本だった。
作中でも「毎晩ちびちびと読んで、疲れたらやめるべきである」と書いてあったけど、実際そういう風に読んでいた。一気に読もうとしたら疲れて、そうなっていた。
エッセイ本だけど小説の時の文体で書かれたあったので、読んでいるこちらは小説を読むときと、特に腐れ大学生作品を読んでいた時と同じノリで読めた。
特に興味深かったのは森美氏の著書の裏話が書かれていて、『太陽の塔』は森美氏の大学時代クラブで出会った友人がモデルで、『四畳半神話体系』の『小津』もクラブにモデルの人物がいるという。マジか。こんな人間が世の中にいるのですか。世の中って広いなあ…。
そこで私が思い出したのは、高校時代の現代文の先生で京大出身の先生だった。その先生が授業中たまにしてくれる京大のぶっとんだ京大生の話が面白くて、京大って変人が多いんだな~と思って聞いていた。
森美氏の周りが変人なのか。京大生が変人なのか。その変人のなかのさらに変人なのか。よくわからない。
他にも大学時代のこと、生い立ちや家族のことペンネームの由来、小説の創作の話なども断片的に語られていて、この面白い小説はこうやって作られていたのかとほんのちょっと知ることができた。あと体調不良、スランプにもなられていたようでそちらも回復してよかった。
小説を読んでいるだけじゃ知ることができなかった。森美氏のことが少しわかっておもしろい一冊だった。