読書感想『人魚ノ肉』
幼い坂本龍馬と岡田以蔵が人魚の肉を食べて…という奇妙な過去から始まる今作。
『人魚の血を飲めば不老不死になり、肉を食べれば妖に憑りつかれる』ことから、岡田以蔵から人魚の肉を奪った新撰組の人々が人魚の肉を食べ、妖になってしまう…。
全体的に不気味な雰囲気が漂っていて、読後感は世にも奇妙な物語を見たような感じに。この場合世にも奇妙な幕末になるのかな。
おもしろかったです。
まず設定がすごい。八尾比丘尼伝説と幕末を結びつけるという発想がすごいと思った。
個人的に好きだったのは沖田総司が主人公の「肉ノ人」という短編。
人魚の肉を食べて、人の血肉を求めるようになってしまった沖田。池田屋の喀血も、斬った浪士の血を啜っていて口から零したものが他の隊士には「喀血に見えた」という流れになっていた。
病から衰弱していくのではなく、人の血肉を食べまいとして衰弱していく…という話の流れになっていて、一見トンデモな設定と史実の流れが混じっていて「おお~」となりました。
人魚の肉を食べた斎藤一はドッペルゲンガーと戦い続けるという短編だったのだけど、斎藤一自身長生きした人だとぼんやりと知っていたので、そうくるか~と。
『人魚の肉を食べて妖になる』というトンデモな設定だけど、ぶっとんだ話になるのではなく、史実とうまくかみ合わせてあるのはすごい。
でも話を読んでいて、人魚の肉を食べた新撰組の人々はとんだとばったちりだな…とちょっと不憫な気持ちに。
この小説、竜馬と以蔵が出てくるのか~という軽い気持ちで読んでみて、以蔵が主役というわけではなかったのですが、要所要所不気味な雰囲気で登場していたのがおもしろかったです。ラストは「ひぇ…」となりました。ラストの以蔵さん、個人的に気になる…。
京都の解釈もおもしろかったです。
史実を元にした幕末の小説読んでいたので、ホラーな雰囲気の幕末も一風変わって面白いと思いました。