インドア日記

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【読書感想】「武市半平太伝」

 

新装普及版 武市半平太伝

新装普及版 武市半平太伝

 

 

 岡田以蔵にはまって以来、史実の情報を調べたり幕末の本を読んだりしてみたけど、今回は岡田以蔵の師匠である武市半平太の本を読んでみることにした。

 

 

 岡田以蔵が主人公の小説だと、身分が低く貧しい以蔵を差別するような嫌な奴として武市半平太が描かれているものもあるけれど、

 この本を読んでみると史実では、武市半平太という人は冷静沈着、真面目、誠実であることがうかがえ、正々堂々正面突破が主義のような人であったらしい。それに加えて趣味人として絵画をたしなんだり詩を読んだりと、文化的な教養を持っていた人のようだ。けれど音痴だったとか…。

 そして愛妻家でもあり、獄中でも妻・富子を気遣う文を出している。

 …すごく、できた人だ…。

 他の志士から「西郷隆盛に似ている」と言われていたようで、彼を慕う人間は多く、投獄されてからも牢番を心服させるほどだったみたいだ。すごいなあ…。

 

 

 

 

 以下、印象に残ったところ。

 

 

土佐勤王党の盟約文には、安政の大獄で失脚した山内容堂の志の恥辱をそそぎ、その志を継ぐと書かれていた。

 

・しかし山内容堂公武合体派、武市半平太尊王攘夷派で何度も対決することになり、そして投獄されることになる。

 

・激しい尋問や岡田以蔵の自白があって窮地に追いやられるけれど、罪状は最終的に政治犯のもので、それは結局のところ武市半平太を落とすことはできなかったということだった。

 また死罪は武市半平太と自白組だけで、犠牲者を最低限にとどめるという目的は達成した…という試合に負けて勝負に勝ったと自分は感じたのだけど…ということが驚いた。

 獄中生活は1年半にもおよび、獄舎は環境もひどかっただろうし尋問で精神もすり減り病魔にも侵されていた。それなのにすべてを投げ出そうとしない。精神力がすごいとしか言いようがない…。

 そして最期は衰弱した体で三文字の切腹を行った。文字だけで見ると「へ~」としか思わなかったけど、本文の獄中闘争に苦心していた姿を読んだ後に見ると、なんでできるんだ…と不思議に思う。精神力なのだろうか…。

 

 

坂本龍馬が仲介した薩長同盟は半平太の切腹の半年後のことで、幕府の長州征伐も失敗に終わり容堂の公武合体策も最終的に不可能になってしまう。

 

・晩年の山内容堂は、病床で「半平太、許してくれ許してくれ」とうわごとのように繰り返していたらしい。wikipedia山内容堂のページによると「土佐藩内に薩長に対抗できる人物を欠いて新政府の実権を奪われたと考え、これを悔やんだともいう」らしい。*1

 

 

 

 

 

 あとがきで著者は

至誠は神のごとく、尊王大義の実現を最高の至誠とし、かたわら、主君山内容堂との君臣関係においても至誠をつらぬきとおし、最後は仮託された大罪を一身に負って切腹した。同志はそこに神々しいばかりの美しさを見、鬼神を泣かしむるほどの感動を覚えたのではないか。 

 として、

なぜ、二百名近くにのぼる土佐勤王党員が半平太逮捕まで、ほぼ乱れることなく従って行ったのか。なぜ、獄屋にいる半平太をみて牢番の多くが心服していったのか。これはいずれも半平太のふたつの至誠が基本になると思わねばならず、しかも半平太はこのふたつの至誠の両立を求めたばかりに時代の犠牲となった。

 と述べている。

 なぜ、のちに自分を追い詰める山内容堂の志を継ぐと盟約文に書いたのか、なぜ龍馬たちのように脱走しなかったのか、何度か逃げ出そうと思えばそれもできたのにそれをしなかったのか…という疑問が、少しわかった気がした。

 

 

 まとめ

 

 読んでいて難しかった。

 勉強不足というのもあるけど政治情勢とか獄中闘争とかの流が難しかった…。読んでいてしんどかったのは否めなかった…。

 以前に同じ著者の「正伝 岡田以蔵」を読んだことがあるのだけど、そちらでは分かりにくかった時代の流れ、政治的な背景がこちらを読んだらなんとなくだけどわかった。

 こちらの本でも武市半平太側から見る岡田以蔵のことが書かれていて、「子供のいない半平太夫婦にとって、出来の悪い肉親のような存在ではなかったか」と書かれている。だったらいいなあ…。

 ともあれ岡田以蔵は志士として国家論を述べることができるような教養は無く、拷問に耐えうるだけの芯がなかった。(いや、あの拷問に耐えられるものなのか?以蔵は無宿者鉄蔵になっていて武士とは扱い違ってたんだぞ?自白しても仕方がないのでは?という問題はさておいて) 

 半平太は元々以蔵を土佐勤王党に入れるつもりは無かったようだし、少なくとも見る目は当たっていたんだなあ…と感じてしまった。

 

 

 龍馬ともども、もし生きていたら維新の後どんな活躍をしていたのだろうと思わずにいられない人物だった。

 もし今後読んだ小説で、武市半平太が嫌なキャラクターとして出てきたら「それは違うよ!」と解釈違いが暴れ出しそうな気がしそうだ。