インドア日記

ひきこもり系オタクのアウトプット置き場。アニメ、ゲーム、読書感想など。思いついたことを書いたりしています。

映画感想『セブン』

 うだるような夏の夜にはホラー!

 …はビビリの自分には怖いし、夏の夜はサイコサスペンス映画だ!

 …と洋画をあまり知らない自分でも名作と言われているの知っている「セブン」を見てみることにしてみた。

 

 

 

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 見た感想としては「あ、これ映画史に残ると言われるだけあるわ」と思った。

 映像は今見ても古臭さを感じず(出てきたパソコンなどで古さを感じる程度)ダークな世界を映し出しているし、考えさせられるストーリーとラストの衝撃はすごかった。

 恐らく見るたびに新たな発見があるようなスルメ的な映画だと思うけど、まずは初めて見た感想を書いてみたい。

 簡単にストーリーを説明すると、二人の刑事、定年を一週間後に控えたサマセットとやってきたばかりの若いミルズが、七つの大罪をモチーフにした猟奇的殺人事件の犯人を追う…という流れ。

 

 以下ネタバレあります。

 

 

 

 

 

 サマセット刑事

モーガンフリーマン。定年間近の老刑事。劣悪な社会に疲れ切った厭世家。もうすぐ仕事辞めるから厄介事には関わりたくないっぽい。

 

 ミルズ刑事

→やってきたばかりの若刑事。若さ故の熱さがあり生意気が残っていて、もう少し冷静になれよと思うほどハラハラさせられた。

 若い頃のブラピがめちゃくちゃかっこいい!

 ラスト、妻トレーシーを殺され生首を配達されたことから憤怒の罪人になりジョン・ドゥを射殺する。その際の「殺しては相手の思うつぼ」という理性と激昂のせめぎ合いの演技が何も語らずとも見ていてわかる。すごい名シーンだった。

 

 ジョン・ドゥ

→犯人。ジョン・ドゥは名無しの権兵衛的な意味。名前も過去もわからないし、指紋も削り取ってあるのでわからない。動機もわかるようなわからないような。台詞もわかるようなわからないような…。何者かわからないまま物語は終わる。

 

 

 

 私はこのストーリーの中の奥底には、劣悪な社会と大衆の無関心が流れているのではないか…と見ていて感じた。

 どんよりとしていて汚らしく暗い映像は社会の負の側面をクローズアップしているし、ミルズの住居は不動産屋にだまされ(説明されなかった)地下鉄が通るたびに揺れるという環境もそれを現している。

 もっともなのがサマセットがミルズの妻トレーシーから出産のことを相談されたときに彼は「この世界に生まれてくる子どもが可哀想(意訳)」的な理由で子どもを諦めたことを打ち明けている。(もしトレーシーが子どもを生むならたくさん甘やかしてやれとも言ってる)

 一瞬この舞台はモヒカンが蔓延るヒャッハー系世紀末だったかなと思ったほどだ。もしくはゴッサムシティ。

 ここでいう社会はモラルは低下し犯罪率が上昇して、けれど人々は誰かが困っていても助けることは無い。厄介事から身を守るために見て見ぬ振りを決め込んでいる…ということなんだろう。

 私はサマセットが無関心の象徴に見えた。年を取り熱さを失った老刑事も無関心になることで自分を守るようになったのかな、と。

 

 

 対してジョン・ドゥの七つの大罪を模した犯行は被害者に大して罪を改めさせるのもあるだろうけど、この事件を世間に見せつけることで、人々に七つの大罪に堕ちずに己を律し清く正しく生きるように説いていたのではないかと思った。

 でも七つの大罪を犯した…といっても被害者は法を犯しているわけでもなく、単に周りにいたら迷惑な人だけっぽい。ヤク中は違うけど…。

 なんか潔癖を突き抜けていった人で、自分の中の正義を押し付けていったようにも見えた。ネットにいる善意の叩き…のなれの果て…という感じ?

 

 

 彼は最後、ミルズの妻を殺してミルズに射殺される。

 その打ち明けた際「ミルズに嫉妬した」と言っていたが、私は「ホントか? 嫉妬のところを自分で埋めるためにミルズを陥れる計画のためにただそう言ってるだけだろ」と思った。

 けどトレーシーが子どもがいると命乞いをしたと言っていたから、ジョン・ドゥはこの劣悪な社会の中でも幸せを築いたミルズに本当に嫉妬したのかもしれない。

 

 

 物語はサマセットがヘミングウェイの言葉を引用して締めくくられる。

 

ヘミングウェイが書いてた「この世は素晴らしい、戦う価値がある」と。後の部分には賛成だ。

 

 正直どういうことかすぐに理解できなかったし、今もよくわからない。

 厭世的だったサマセットがミルズとコンビを組み、彼に対しアドバイスし、捜査に協力し、時に諌めていくうちに、関心を向けるようになった。

 事件が終わった後は「戦う価値」を見出した…ということなのかな。

  う~ん、わからん。

 

 

 私は映画を見る前にネタバレを踏んでいたんだけど、それでも見て衝撃的だった。

 ラストは、運び屋にダンボールの箱が届けられ、そこにミルズの妻トレーシーの生首が入っていて…という流れだったんだけど、生首そのものは映像に写っていない。

 ジョン・ドゥの淡々とした台詞の流れとサマセットの驚き、慌てよう。そして理性と激昂に揺れるミルズの表情にワンカットだけトレーシーの映像が流れるのだ。そして射殺。あ…撃った…。でも撃つよなあ…そりゃあ…というやるせなさが胸に占めた。

 

 

 事件はグロテスクだしラストは胸糞だけど「見なきゃよかった」と後悔するほどのトラウマものではなかった。個人差はあるかもしれないけども…。

 あんまり映画を見ない自分でも、「ほわああああ!」と興奮して思ったことをつらつら書き殴りたくなるような力を持っている。そりゃ、今だに「どういう意味だ」とみんな語り続けるわけだよ…。

 まだ見たことが無い人は見てみると面白い……はず。

 ただ犯人を追いつめてスカッとする展開を期待していると、裏切られるので注意。