なぜ１話にして腹筋崩壊太郎ロスに陥ってしまったのか考えてみた。
(『仮面ライダーゼロワン』１話の内容についてネタバレしています。ネタバレを知りたくない方はブラウザバックをお願いします)
9/1に放送された『仮面ライダーゼロワン』。令和初の仮面ライダーを見た。
売れないお笑い芸人から祖父の会社の社長になった或人。黒髪セミロング美少女社長秘書ロボのイズちゃん…などなど個性豊かなキャラクターたち。豪華な俳優、声優。そしてどこか原点回帰したような変身…と１話全体から令和の仮面ライダーを絶対盛り上げるぞ！という気迫を感じた。
ジオウロスに陥っていた自分だけど、これは面白い物語になりそうと期待できた１話だった。
しかし１話で一番インパクトがあったのが、腹筋崩壊太郎だった。
腹筋崩壊太郎である。
中の人の存在感と一度見たら忘れられない名前がベストマッチして登場する前から公式HPの記述が一部で話題になっていたが、いざ登場した後、知名度が爆発した。
ツイッターでは「腹筋崩壊太郎」やさらには「腹筋崩壊太郎ロス」の単語もトレンド入りしていた。
インパクトを感じたのは自分だけではなかったらしい…。
そこで人は…というと主語が大きいので、どうして自分は腹筋崩壊太郎ロスに陥ってしまったのか考えてみることにした。
１．腹筋崩壊太郎とは？
１話に出てくるお笑い芸人型ヒューマギア(人工知能搭載人型ロボ)のこと。
演じている方は「お笑い芸人なのかい？ボディビルなのかい？どっちなんだい！」と思わずにいられない幅広い活躍をしている、なかやまきんに君。
令和仮面ライダーの初怪人として登場することになった。
２．腹筋崩壊太郎の活躍。
１話の腹筋崩壊太郎の活躍だけを抜粋してみた。
① ターミネーターをオマージュしたような登場の仕方で画面初IN。
遠巻きに或人に「人口知能に人間のお笑いは理解できないでしょ」と言われるものの「腹筋パワー！」と腹部の装甲を飛び散らせるネタで会場を爆笑させる。
②舞台裏にて、自分のネタが爆笑したシーンを思い出して満足気な笑みを浮かべるものの困惑した表情に変わる。
途中、敵の会話で「ヒューマギアのシンギュラリティを利用する」「自我を持った人工知能が人間を超える」とのことから、腹筋崩壊太郎は自我に目覚めていたようだ。迅に話しかけられる前から困惑したような顔をしていたから、自我に戸惑っていたのか？
しかしその自我のせいで目をつけられ、迅にベルト…ゼツメライザーを装着させられ「できません…私の仕事は人を笑わせることだから…」と抗うも「滅亡迅雷.netに接続…」とデータを書き換えられて(洗脳されて)しまった。
③遊園地でお笑いステージにて登場するも「やー！」と司会を吹っ飛ばして「私の仕事は人間を笑わ…滅亡すること」とベローサマギア(怪人)に変身、他のヒューマギアも改造し人間に襲いかかってくる。
④ボロボロになった遊園地にて「私の夢が…」とうなだれる支配人を締め上げ「人類に夢を見る未来は来ない」と笑う。「何もわかっていないくせに、人の夢を笑うな！」と或人に言われるも「夢とは将来の目標や希望、願望を示す」とググったような答えを返す。もう冒頭で見た腹筋崩壊太郎の面影は無い…。
⑤ゼロワンに変身したアルトに「お前は何だ」と聴いて、令和初仮面ライダーのかっこいい名乗りを促したのち、ゼロワンに吹っ飛ばされる。
⑥ゼロワンのスタイリッシュアクションで数々の攻撃を避けられた後「お前を止められるのはただ一人、俺だ！」と必殺技ライジングインパクトを受け破壊された。
公式HPによると
このようにデータが改ざんされ、ヘッドセットのレッドアラートが点灯した状態のヒューマギアは原状回復を果たすことは技術的にほぼ不可能であり、破壊する以外の対処方法はない*1
とのことなので、破壊されたのは確定したといっていいだろう。
３．感想
(１) 腹筋崩壊太郎には救いが無かった。
こうして１話を通してみると、腹筋崩壊太郎は敵に洗脳されて怪人に変身させられた被害者でありながらも救いがなかった。
仮面ライダーを語れるほど全作品を見ているわけではない自分だが、敵により怪人にされてしまった被害者は、仮面ライダーによって怪人は倒されるも被害者本人は救われる、ある意味「憑き物落とし」のようなパターンをよく見てきた。
しかし太郎は破壊されてしまった。救われないというパターンは衝撃的だった。
しかも前述した公式HPによると破壊以外に止める手立てがない。
それがなおのこと悲劇の悪役と感じてしまうことになってしまった。
(２) 腹筋崩壊太郎がいなくなったことを悲しむ人間がいなかった。
ゼロワンに破壊された後、遊園地を辞めてしまうのか子供に聴かれた支配人は「これからもこの遊園地はお客様に笑顔を届けます！」と答えて周囲が笑顔になる。
それを見た或人はこのような「笑いの取り方もある」と社長になるやる気を見せる…という流れだが、見ている自分としては、腹筋崩壊太郎が戻ってこず破壊されたのだとわかったシーンでもあった。
そしてこのシーンに、お客さんを笑わせていた腹筋崩壊太郎の心配をしている人間が誰もいなかったことに違和感を覚えた。冒頭、或人よりもお客さんを笑わせていてお客さんにとっても存在感があっただろうに。
閉園を心配されるほどボロボロになった遊園地を前にして、お笑い芸人型ヒューマギア一人の心配をしている余裕はないのかもしれないが、一人ぐらいいても良くない…？ 腹筋崩壊太郎ファンとかいたでしょ…？ 中には映像に映っていないだけでいたかもしれないが、腹筋崩壊太郎がヒューマギアだからこの反応なのだろうか。
(３) 腹筋崩壊太郎が自我に目覚めたことは敵しか知らないということ。
腹筋崩壊太郎ロスを感じてしまうのは、彼がただの機械的なロボではなく自我の芽生えがあったからだと考える。
元々名前＋外見（筋肉）でインパクトがあったものの、舞台裏でお客さんを笑わせたシーンを思い出して笑っていた太郎にただのロボットではない深いものを感じてしまったから、見ているこちらとしては救いを求めてしまった。
しかし或人は恐らく腹筋崩壊太郎に自我の芽生えがあったことに気がついておらず、或人のみならず作中の人間は気がついていなかったと見ていいだろう。敵を除いて。
誰にも知られること無く消えてしまったことに切なさを覚えてしまった。
そして今後怪人が自我を持っていたヒューマギアだと知ったとき、ゼロワンははたして腹筋崩壊太郎を破壊したように破壊できるのだろうか…という問題も考えられた。
(４) 救われたとしても腹筋崩壊太郎に居場所は残っていたのだろうか？
これただの空想だけど、改ざんされたデータが元に戻ったとしても、以前と同じように遊園地で働くことができるだろうか。いや、できないと思う。
一般人の目にはバグって人に襲いかかってきた恐ろしいロボになったわけなので、ゼロワンの手に寄らなくても回収され新しい機体と交換、処分されることになりそうだ。もしくはデータの初期化されるか。どのみち舞台裏でお客さんを笑わせたシーンを思い出して笑う太郎は消えてしまう。
救われたとしても、腹筋崩壊太郎の人を笑わせるという仕事、つまり彼の存在意義は無くなってしまう…。そう想像すると寂しさに拍車をかけた。
ベストマッチな名前と見た目でガッチリと関心を掴み、視聴者だけ笑みを見せ、その救いのない結末は1話限りのゲストキャラクターなのにこれだけのことを感じとってしまうほどだから自分はロスを感じてしまったのではないだろうか…。
４．最後に。
ゼロワンを見ても「我が魔王ロス」「祝えロス」は時間が経たない限り治らないんだろうな…と思っていた矢先、ゼロワン１話にして新しいロスをぶち込まれるとは思わなかった。
１話を見終わって腹筋崩壊太郎が頭から離れなかったので、感想を書く際にもう一度ゼロワン１話を見直したのだけど、初見では世界観と話の流れについていくのに精いっぱいだったのが、見直すことで細かいところも気が付くことができた。
「シンギュラリティ」「滅亡迅雷.net」など細かくない重要な単語も聴き逃していて、見直して「あ、ここで言っていたんだ」ということがわかった。腹筋崩壊太郎を通じてゼロワン世界観が少しわかったというか…ありがとう腹筋崩壊太郎！
そして腹筋崩壊太郎の活躍や台詞追ってみると、迅によってデータを改ざんされたが怪人に変身する前までは、彼のデータはまだ残っていることに気が付いた。怪人に変身したことで完全に腹筋崩壊太郎ではなくなったと感じた。
腹筋崩壊太郎に改ざんされた他ヒューマギアも「迷子のお知らせ」のアナウンスなどしながら攻撃してくるので、そういう細かいネタも気が付くことができた。そしてロスが返って加速したわけだけど…。
そんな「腹筋崩壊太郎ロス」などの反響を受けて、きんに君が撮影裏話を語った動画をあげてくれている。見ました。笑いました。
ありがとう、きんに君！
こう長々と書いてしまったけれど、腹筋崩壊太郎は１話ゲストでありゼロワンの主人公は或人くんであり、１話に盛り込まれた謎が気になるのとイズちゃんとのコンビが可愛いし個人的に迅さん気になるので、見続けたい。
