映画感想『ヒトラー ~最期の12日間~』
ネット界隈だと、この映画のとあるシーンは「総統閣下シリーズ」という嘘字幕動画として有名だ。かくいう私も、嘘字幕動画からこの映画の存在を知り、「チクショウメ!」「おっ〇いぷるんぷるん!」の元ネタを見ようと今回見たのであった。
こんな動機で見たのが申し訳ないぐらい、名作でした・・・。
この映画はタイトル通り、ヒトラーが自殺するまでの最期の12日間を描いた物で、淡々と始まり、淡々とヒトラーやその周囲の人々、そして戦場を描写していく。
見ている側の感情を意図的に盛り上げるような描写の仕方はなかったように感じた。
タイトルは「ヒトラー」と銘打っているけど、内容としては群像劇だった。
なので、私はナチスのヒトラーの周囲の人々のことは全然知らなかったので、次から次へと現れる登場人物たちを「え・・・と、だれだったかな・・・」と覚えるのが大変だった。
また世界史にも詳しくないので「今、どんな状況になっているのか」を把握するのが難しかった。
なので歴史の教科書とかwikiを始めに見ておいたほうがとっつきやすいかも知れない。
特に、この映画の流れは下記のwikiに書かれている通り(だと思う)ので、これを読んだらわかりやすいかも。私は映画を読み終わってから見ました。
淡々と描かれていると言っても戦争ものなので、当たり前だけど人がいっぱい死ぬ・・・。今まさにソ連軍が目の前まで来ているという状況の中、戦う人、逃げる人、戦おうとする少年兵、思考停止する人・・・。などなど、極限状態に追い込まれた人々の様子も見ることが出来る。戦地では人が死に怪我で呻く人々や兵士がたくさんいるのに、現実から逃げるために酒に溺れてどんちゃん騒ぎしている人々もいる。
「なんだかな・・・」と思ったのは、ヒトラーやゲッベルズたちの自殺。
ヒトラーは毒薬と銃によって自殺する。周囲の人々との別れもして、できるだけ苦しまないような方法で自殺する。でも外では、市民が親衛隊に捕まり首に縄をかけて吊されて殺されている。同じドイツの兵士同士でも、逃げようとしたら殺される。「この状況でこんなことしている場合かよ」と思うのだが、これが戦争というものなのだろうか。
そんな、ヒトラーの死と市民たち戦場で戦っている兵士の死の対比が見ていて、不条理に感じられた。一般の人々が家族との別れも出来ず、突然にあるいは苦しみながら死んでいっているのに、最期の別れをしてできるだけ苦しまないように、そして自分の遺体の後始末も頼むという・・・。何でお前は死に方を選んでいるんだ。死に方を選べずに死んだ人が大勢いるのに、と思ってしまった。
ゲッベルズの子どもたちが殺されるシーンも、グサッときた。奥方が薬を飲ませるんだけど長女だけは察していて抵抗して、でも結局薬を飲まされてしまうという。
この映画を見終わった後wikiを読み漁ったんですけど、このシーンも史実で、長女が抵抗した跡があったというのが、追い打ちでグサッときた。
淡々と地獄が描かれているような映画で、見ていて「うわあ・・・」と辛くはなるんだけど見るのをやめるのはできなかった。名作ってすごい。
見たこと無い人は、一回は見た方がいいと思う。
でもあの嘘字幕を最初に作った人や最初に空耳が聞こえた人、どうしてこの真面目な映画のあのシーンでアレを作ろうと思ったな。よく茶化せたな、と不思議に思う。