金ロー版『ローマの休日』を見た感想。
先日、金曜ロードショーで放送された新吹き替え版の『ローマの休日』を見た。
声優さんに惹かれて…もあるんだけど、見たことがなかったので、名作と呼ばれる作品は目を通しておきたかった。
白黒映画の古典作品なので、名作と呼ばれる作品でも、娯楽が飽和した現代社会で生きる人間である自分は楽しめるのだろうか。まあ、昔の作品だから、当時の人にとっては斬新で面白かったのかもしれないけど、今の自分にとってはどうなんだろう…とあまり期待してはいなかった。
……のだが、最終的には自分のなかのきぶり爺が「抱け―! 抱け―!」と叫ぶ羽目になるほど見入ってしまった。
手のひら、返しまくりである。
なぜだろう。
① 嫌なキャラクターがいないということがわかって、見やすい序盤。
② このままこの時間がずっと続けばいいのに…という気持ちが湧く中盤。
③ 言葉に出して教えていないのに、正体がわかっているというエモい終盤。
④ 振り返っても、彼女はいないというラスト。
自分のなかで感じたことを、大ざっぱに分けるとこんな感じだった。
ちなみに、きぶり爺化したのは③です。
まず、見始めて思ったことは「この映画、見やすいな~」ということだった。
お城での生活に嫌気が差し、庶民の生活にあこがれる王女様というキャラクターは今現在でもよく見るキャラなので、今の自分から見るとベタだな~と思った。その王女がお城から逃亡するという話も王道展開だから見やすかった。
(アン王女は疲れ果てていたけれど…)
見やすいのは、この作品に出てくるキャラは不快な人物がいなかったことが大きいと思う。
アン王女は自由にあこがれているものの根は王族の責務からは逃げなかったキャラだし、王女のスクープ記事を書こうとしたジョーだって、もう途中からスクープ関係なく彼女を楽しませようとしていたよね…と思う。カメラマンのアーヴィングだってジョーと付き合い、最後は粋な対応をした。
巨大な陰謀とか黒幕の魔の手が…とか、そういった存在はなく、本当にただただ「アン王女が休日を満喫した」話だった。
そのアン王女とジョーのイタリア観光が、めちゃくちゃ楽しそうで、見ているこちらはニヤニヤしっぱなしだったのである。
有名な真実の口のシーンは、見終わったあと調べたらジョー役のグレゴリー・ペックのアドリブだったらしい。うわあ~。かわいい…。
白黒の時代の映画でまさかニヤニヤさせられるとは思わなかった。だから、二人が別れるときには「抱け―! 抱け―!!」ときぶり爺化してしまったのである。
この映画、別れのシーンでも、アン王女は自分が王女であることは伝えないし、ジョーの方も言及しない。
身分違いの恋をしたが、結局二人は互いの生活に戻ることになった…というラストだけど、悲壮感はなかった。ただエモさを感じてしまった。
エモさ…という言葉を使うのは便利すぎるので、頑張って自分の中で言語化してみると「粋だなあ…」という感覚だろうか。
王女と一介の新聞記者という立場に戻り、二人は別れていく。一人になって記者会見(でいいのかな?)の場所から立ち去っていくジョーのシーンでは見ているこちらも「振り返れー!」と叫んでしまって、実際ジョーは最後の最後振り返るのだが、彼女はいない。そこで映画は終わりを迎える。
もうご都合主義でも何でもいい。逆シンデレラストーリーでもいいじゃん。超絶怒濤のハッピーエンドにしてくれ…。二人がくっついてめでたしめでたしなラストが見たいな…という気持ちにぶっちゃけなったのだが、もし実際にそれをやったら、今まで語り継がれるほどの名作にはならなかったかもしれない。
悲壮感を感じない、爽やかではあったものの、やっぱり淋しさがある。そんな感情がごちゃまぜになって胸がいっぱいになったラストだった。
…っていうか、アン王女が可愛いんだわ…。オードリー・ヘップバーンが綺麗なこともさることながら、キャラクター設定がいいんだわ…。
名作を新しく吹き替えるという企画。
声優さんに釣られてホイホイ見て情緒が大変なことになったので、いい企画だと思います。
金ローは、名作と言われる作品をもっと流して欲しいな…。また同じような企画やって欲しいなあ…と思いました。