読書感想『書楼弔堂』シリーズ。
初めて京極夏彦作品を読んでみた。
京極夏彦作品=鈍器的な分厚さとイメージしているんだけど、噂に違わず分厚くて本を支えていた腕がプルプルするほどだったけど、読み応えがあった。
時は明治。
弔堂という書舗が舞台の物語で、そこの主人は本は墓のようなものでふさわしい読者と書物を引き合わせることが供養であると言い、何か問題を抱えたお客に対して、その人の一冊を見繕ってくれる…というお話。
登場人物たちの会話、問答によって抱えた問題が明らかになり解釈が変わったり整理されていくのが、不思議で面白かった。
言ってしまえば、前置きが長いな~と思ってしまったりもしたけど、主人はこのお客にどんな本を渡すのか…と先が気になってすいすい読めた。
しかも、この弔堂にやってくるお客は実在した人物なのだ。
最初はわからないけど読んでいくうちにわかるようになっていて「え~○○なの~!?」と驚いた。
この本は連作短編集になっていて一章ごとにやってくる人物が変わる。しかし2巻は語り部のほかに「松岡」という人物も全編通して出てくる。準主役ぐらいの立ち位置になっている。(もしかしたら主役だったのかもしれない…) その「松岡」の正体が最後の最後にわかったときは驚いた。
その歴史上の人物が行った行為が弔堂に訪れたのがきっかけかもしれない…という物語の流れになっていて、そういう所も面白かったです。
また自分は歴史に疎く名前しか知らなかったりしたので、読了後ネットで調べて、「史実通りのこと書いてあったんだ…」と復習し二重の意味で楽しめた。
語り部は一巻、二巻ともに違う人物なんだけど、どちらも最後にフルネームがわかるようになっている。
私は他の京極夏彦作品を読んでいないからわからなかったけど、もしかしたら読んでいたらびっくりするような仕掛けだったのかな?
それで個人的な感想として、私は一巻『破暁』岡田以蔵が出てくる短編『贖罪』が好きだなあ…。
あんまり書くとネタバレになるから書くの迷うけど、岡田以蔵がジョン万次郎の護衛をしたという話は創作である…というネタを知っていたけど、そのネタを含みつつこのような物語を作り上げたって言うのが、ちょっと今まで岡田以蔵が出てくる小説では見たこと無くて(私もそんなに読んでいる方じゃないけれど)、目から鱗。解釈が面白かった…。