【感想】『狂骨の夢』★★★★☆
読みました。
この〈百鬼夜行〉シリーズ。「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」と今回の「狂骨の夢」で3作品続けて読んだ形になったんですけど、今までとは違ったベクトルで読みづらさを感じてしまいました。
ちょっと簡単に整理してみると
① いさまやが朱美と出会う。
② 教会に住む降旗と牧師の白丘の元に「朱美」が相談にやってくる。
③ 関口くんと敦子ちゃんのところにやってきた宇田川崇が妻「朱美」の精神状態について相談する。
おおざっぱに分けてこんな感じでしょうか。この3つの視点でお話が進んでいく形になっていきました。
そのなかでも
① 朱美の過去。髑髏を持つ実家のこと。夫が兵役を忌避し逃亡したこと。夫と駆け落ちした情婦・民江を殺したと思っていること。
② 民江と川に転落して記憶喪失になった「朱美」には自分とは思えない他人の記憶が前世の記憶のように蘇ってくるようになる。
③現在の「朱美」の元に元夫の幽霊がやってくるようになる。「朱美」は幽霊を殺して首を斬るが、幽霊は何度もやってくる。
という話が視点を変えて話題になります。
他にも降旗の髑髏の夢や、警察側の木場の視点では「金色髑髏事件」や「二子山集団自殺事件」が語られます。
フロイトや精神分析の薀蓄も難しくて読み続けるのがしんどかったんですが、
視点が変わっていても、話しの中に出てくる話題は共通していること。でも微妙に違っているような。同じような話題が何度も繰り返され、読み進めてもなかなか進んでいないような錯覚を覚えました。
事件群の話であるため、視点毎に「起承転」があり(これは前回もそうだったんですが)「続きが気になるのに視点が変わってしまった…」なので、これも読みづらい一因だったのかも。
でも京極堂の憑き物落としという真相解明編である「結」を読むと、この事件群たちが「こういう背景があり、こういう人たちがこういう理念の元起こした結果である」という一本の筋のように整理され、モヤモヤした筋がはっきりするのが鮮やかでした。スッキリ。
この感覚が癖になるというか。分厚く決して読みやすいわけでもないのに、この感覚がこのシリーズの魅力的なんでしょうな。
また、この『狂骨の夢』の冒頭では『魍魎の匣』の後日談も語られていました。
姑獲鳥→魍魎→狂骨と時系列になっているのですが、語り部である関口くんは濃厚な事件たちに立て続けに関わったことになっていまして、本人も作中で色々言っていましたが、一読者としての自分としては関口くんが心配になりました。この調子で関わって行って関口くんは大丈夫なんだろうか…と。
あと関口くんの心理描写、すごくわかるところもあって「私も臆病者だ…」と思ったりもしました。京極先生なんでわかるんだろう…。
彼はこの先も事件に関わり続けるのか…次回も気になります。