映画感想『レオン』
ジャン・レノが殺し屋やってる映画…しか知らなかったので見てみたんですが、すごく良かったです…。
買い物に行っている間に家族を惨殺された12歳の少女マチルダは、隣人レオンに助けを求める。戸惑いながらもマチルダに救いの手を差し出すレオン。彼が殺し屋だと知ったマチルダは、復讐するために殺し屋になりたいと懇願する。*1
何が良かったって色々あるけど、やっぱり一番はヒロインのマチルダです。彼女が出てきて、ぐっと映画の中に引き込まれた感じがします。
子どもなのに、魔性の女という言葉がぴったりなんですよ。
家族を殺され、復讐のためにレオンと暮らすことになったマチルダ。
最愛の弟を殺した相手を殺してほしい、さもなくば自分に殺しの技術を教えてほしい…とレオンを振り回す彼女ですが、もう一つ、マチルダはレオンにモーションをかけてきます。マチルダはレオンと一緒にいるうちに、レオンのことが好きになっていくのです。
その「レオンのことが好きになったみたい」というシーンも、ベットの上で自分のお腹を撫でながら言うんですよ。他にも「友達は初体験がいいものじゃなかっていうのは、好きな人としなかったから」(うろ覚え。だいたいこんな意味のこと言ってた)と言いながら、じゃあ好きな人とした場合は?と、レオンにお誘いをかけるわけです。
振り回しとる…!
子供の姿をした大人…! 魔性の女…!
ドキドキしましたね。
光源氏計画がある意味全人類の夢だとしたら、大人っぽい少女が年上の男性にぐいぐい迫ってくるのも、男の人のロマンっぽいなあ~と思ったりしました。
対して、主人公のレオンは凄腕の暗殺者でありながら、大人になりきれていない大人であります。本人も作中でマチルダにそう言っています。
冒頭、スタイリッシュ暗殺シーンで「こいつはすごい…」と思わせておいて、マチルダとの共同生活のなかで色々人間臭いところが見えてきます。学校に通っていないから文字の読み書きができず、ホテルのチェックインではマチルダに助けられていました。……今までどうしてたの?と思わずにはいられなかった。
マチルダがレオンに迫ると、レオンは牛乳を吹きます。そんな人でした。
レオンは「大人になりきれていない大人」に対してマチルダは「大人びた子ども」。
二人は孤独を抱えた人間です。
マチルダは弟を除く家族から虐待を受けていて、多分、この部分は私の憶測なんですけどまだ幼い弟を守るために大人になろうとしたんじゃないかと。
レオンは、過去の殺された恋人のことをずっと思っているらしいので、殺し屋になってからずっと孤独だったんでしょうな。
愛する者を失って孤独になった二人は愛し合い、最終的に孤独を回復させます。
私は最後まで見て、レオンやマチルダが選んだ「殺し屋」はある意味「現実逃避」だったのではないかな…と思ってしまいました。
そう思ったのは、レオンが最後、マチルダを逃がすシーンで彼女に言った言葉、
「金を持って二人で逃げよう。君は生きるのに臆病だ。大地に根を張って、二人で生きよう。愛してるよ」
(私が見たバージョンだと上記のように言っていたと思ったのですけど、ネットで探してもどこにもなくて、ネットで見たセリフだとこう言っていたみたいです。
「マチルダ、君は俺に生きる喜びを与えてくれた。幸せになるんだ。ベッドで寝て、大地に根を張って暮らしたい。決して君を独りにはさせない」)
マチルダはレオンに何度もモーションをかけて、そのたびに「君は子どもだから」とかわしていたレオンが、最後の最後にマチルダをしっかりと受け入れたことが、見ているこちらにわかったシーンです。
そしてレオンが死んだあと、トニーの店に戻ったマチルダはトニーに「仕事をしたい」と言って怒られます。12歳の小娘に殺し屋なんて現実的に考えてできませんし。仕事も振れません。
そうしてマチルダは今まで通っていなかった学校に行き、校庭にレオンの親友の観葉植物を植えるのです。「ここなら安心よ、レオン」と。
実はマチルダと一緒に暮らすようになって最初の方に、レオンは観葉植物のことを「親友だ」と紹介しており、マチルダは「本当の親友なら、大地に根付かせてあげたら」ということを言っております。友達のいないおじさんにはグサリとくる痛い返しすぎますけど…。
これは私の推測なんですけど、レオンはマチルダと一緒に逃げれたら、殺し屋を辞めようと思っていたんじゃないでしょうか。レオンはマチルダに殺し屋はさせたくなかったですし、大地に根を張って二人で生きようと言っていました。殺し屋はホテルを転々としている根無し草ですから。
そのレオンの愛の言葉を受けたマチルダも、最後は学校という彼女にとっての日常に戻り、校庭に観葉植物を植えます。ここで生きていくと決めたんだろうな…と思っています。
愛する人を殺されて殺し屋になったレオンは、もう復讐を完了しているのに恋人のことが忘れられていない。
そんな過去に捕らわれていたレオンが、マチルダと一緒にいたいから、大地に根を張った生活をしたいと望むようになった。現実を向くようになった。
対するマチルダも、愛する人を殺されて復讐のために殺し屋になりたいと願った。こちらも過去に捕らわれています。
そんなマチルダもレオンの最後の言葉を受けて、彼女にとっての現実→学校に戻って行った。
過去に捕らわれた二人が、孤独を癒し現実と向き合うようになった。現実と向き合うっていうのはある意味大人ですから、子どもである二人が大人になった…と見ることもできるんじゃないかな、と。そこまでは考えすぎかもしれませんが。
レオンがマチルダに向けた愛の形が父性愛なのか、男女の愛なのかはわかりません。
明言はしない方がいいですよね。そういった愛の形ということで…。
この映画「レオン」。1994年制作のものらしいのですが、今見ても古臭く感じないんですよ。出てくる電話の大きさで「古っ!」と思うぐらいです。
映像のかっこよさ、セリフのかっこよさ、レオン、マチルダ、敵のスタンの個性的なキャラクター。特に敵のスタンはどこにでもいるような高圧的なボスではなく、どっかで見たようなサイコパスでもなく、得体の知れないやばさが伝わってきます。詳しくは見て。
見てよかったな~と思えた映画でした。