映画感想『ファイト・クラブ』
不眠症に悩む若きエリートのジャック。彼の空虚な生活は、謎の男タイラーと出会ってから一変する。自宅が火事になり、焼け出されたジャックはタイラーの家へ居候することに。「お互いに殴り合う」というファイトにはまっていく二人のもとに、ファイト目当ての男たちが集いあうようになる。そして秘密組織“ファイト・クラブ"がつくられた!*1
有名な作品ですが、今まで見たことが無かったので、全くの初見の感想になっています。
20年近く前の映画なのですが、古臭く感じませんでした。
不眠症な主人公とメンヘラなヒロインのマーラ。
そして知的で、イカれた行動力があって、強く、カリスマ性のあるタイラー・ダーデン。
殴ること、破壊することで生きている実感を得る…という感覚。
互いを殴り合うことを目的とした「ファイト・クラブ」
これらの設定とどこかジメジメとした陰鬱な雰囲気の映像見せられたら、中二か高二病時代の自分が見たら、どっぷりとハマっていたでしょう。あのころ暗黒面に惹かれてしまう性質だったからね…。なのであまり古臭さは感じませんでした。
古い作品なので注意喚起をするのもどうかな…と思いますけど、ネタバレつっこんでいきますので、注意。
ストーリーの流れは
①不眠症で悩む主人公がタイラー・ダーデンと出会い、彼に頼まれて彼を殴ることをきっかけにファイト・クラブを結成される。
ファイト・クラブは拡大していき、主人公はクラブにのめり込む。不眠症も改善していく。会社でも殴られて青あざを作った顔、着崩した格好で行って、タイラーの口調をまねて上司に立ち向かうなど、実生活の方も影響されていく。
②しかし、タイラーとファイト・クラブは段々と過激になっていき、主人公はついていけなくなる。
③「騒動計画」に向かって行く中タイラーが突然消え、タイラーを追って行く中で、主人公は自分自身がタイラーだったのだと気づく。タイラーは主人公の別人格だった。
④ビルの爆破を止めるために、タイラーと殴り合いをする主人公。最終的に、拳銃を自分に撃つことでタイラーを消す。
主人公はヒロインと共に、爆破されていくビルを見ながらエンド。
かなりストーリーを端折るとこんな感じです。wikiのほうが詳しいあらすじ書いてあります。
色々感じたこと、思ったことを書こうとすると上手く書けずドツボにはまってしまったので、基本に立ち返り、面白いと思ったところを書いていこうと思います。
(1)物質主義の枠組みにはまっている主人公が精神的に疲れていて、ルールの枠に入ってない、ルールに従わないタイラーと出会い、殴り殴られて生の実感を得て回復していく。
主人公の部屋は北欧家具が買い揃えられています。北欧家具って暖かみがある…とか、なんというか良いイメージがあるじゃないですか。でもその部屋にいても主人公は幸せでもなくて、しかも、その部屋は爆破されます。
そしてタイラーと共同生活をして、ファイトクラブが結成されます。
このタイラー、ボロ家に住み、レストランで働いている時はマイルドな言い方をすれば混ぜ物をし、映画館でフィルム交換をするときはポルノ画像をサブリミナルで入れるという、イカれた奴。ルールに従わない、ルールに唾を吐くような奴で、そんな人物との出会い、ファイトクラブで殴り殴られることで主人公が回復していく…っていうのが、面白い。
文明社会、物質主義のカタログ的な幸せでは主人公は満足できなくて、カタログを壊し、殴り殴られる原始的な部分に立ち戻ることで回復していくわけです。この殴り殴られるという攻撃的な、破壊的な部分は、文明社会では抑圧されたものでもあります。
なんというか、男の人の闘争本能は戦争が無くて平和になったところで消えない本能的なものなのだな…と思わされました。
(2) 主人公=タイラーであること。タイラーは主人公の別人格であることが中盤、明らかにされます。
北欧家具で囲まれた部屋を爆発させたのも主人公自身です。主人公がこれを望んでいたわけです。
騒動計画も部屋から社会全体に広がっただけな気がします。
二重人格と聴くと、幼い頃虐待があったなど悲しい過去が原因かと思われますが、主人公の過去はタイラーに少し語っただけで、詳しくは明らかになっていません。多分、そこが問題じゃないから。
だから、誰の中にもタイラーはいる…みたいな印象を受けました。
タイラーはルールに唾を吐くイカれた野郎で実際にいたら迷惑ですが、カリスマ性があり知的で強い。そんなキャラクターに皆、あこがれるもんじゃないですか?
その皆が心の中で作っていた中二的なキャラが本当に人格を持ってしまった…そういう印象を受けました。
(3) ビルの破壊をヒロインと一緒に見ながらの、エンド。
これ見たとき、ぽかんとしてしまいました。
ハッピーエンドといっていいのか、でもバッドエンドっていうわけじゃない気がする。
ただパンツ一丁になりタイラー、もとい自分を拳銃で撃った主人公とヒロインが手を握りながら見つめるガラスの向こうで、ビルがどんどん崩れ去って行きなくなっていく光景は、すごいものでした。多分、忘れられないシーンになるんじゃないかな。
この映画を見て、男性的な映画だな…と思いました。
その男性性を表わしているのか、それとも単に作中でタイラーがやっていたことをしただけなのか、最後にサブリミナルで男性器が映っているという情報をネットで調べて知ってしまい、リモコンで一時停止して見ました。見てしまいました。
BSで録画したものなので修正済みでした。
ただ流してみるだけならわからない一瞬の画像を、文明の利器で見るという…。それで見るものが、ポルノ画像。見なけりゃよかった…的なもの。それをやった人間をタイラー、笑ってそう。
自分は、すごく皮肉なことしてるな~と思ってしまいましたよ。
見たら感想を残そう。よほど書けないものでない限り、きちんと残しておこうと自分ルールを課しているのですが、この映画で色々感じたことがあるのにうまく言葉にできなくて、なかなか感想書けませんでした。
きっと何回も見たら、言葉にすることができそう。
若い頃のブラピ、めちゃくちゃカッコいい。