映画感想『王立宇宙軍 オネアミスの翼』
TVシリーズ版エヴァのガイナックスのアニメ映画・・・というわけで見てみた。
ストーリーについてはわかりやすい説明がwikiに書いてあるので、そちらを参考にして下さい。
自分的にまとめると、
税金泥棒的な穀潰し軍隊である王立宇宙軍に所属するだらけたおっさん軍人シロツグ(森本レオの声で、だらだらした生活を送っているからおっさんだと思っていたけど、wiki見たら21歳だった。おっさんじゃない)が宗教信仰に入れ込んでいる少女リイクニと出会って、宇宙軍のことをよくわかっていない彼女から仕事を褒められたことをきっかけに、歴史上初の宇宙飛行士になることを目指す・・・というストーリー。
見終わった後、ネット上で色々と感想を見たけれど絶賛の声も多くあれば、つまらないという声もあり、私としてもどちらの気持ちもわかるなあ・・・という感想を持っている。
じゃあ、個人的に面白いなあ・・・と思った点から上げていくと、やっぱり映像がすごかった。
背景の書き込みとか機械の細かさとか・・・そういった映像美がすごかった。
あの年代のアニメーターさんの好きなもの、こだわりを詰め込みました感が伝わってくる感じ。ロボとか飛行機とか機械もの好きなんだろうなあ・・・という感じ。
世界観もアジアな雰囲気を出しつつも現代に近い機械文明で、だけど貧富の差もあって、そういうごちゃごちゃとした発展しているけど汚いような街並が見ていて面白かった。(ラピュタとかAKIRAとかしか例に上げられないけど、この年代のごちゃごちゃした背景、雰囲気が似ている感じがする)
あと、主人公周りのおっさんたちのやり取りが面白かった。
主人公がやる気を出したことをきっかけに、周囲の仲間のおっさんたちも働き出す。(おっさんと書いているけど、主人公の年齢がまずおっさんではないので、厳密にはおっさんじゃないかも)
ロケット制作班もじいさんばかりで、そういう社会からあんまり期待されていない人間たちが何かを成し遂げようとするシーンが面白かった。
ではつまらなかったのはなぜか・・・というと、
主人公は何をしたかったんだろう・・・ということ。主人公の行動によって変化するものが無かったのだ。
先ほど、シロツグが宇宙飛行士になったのは宗教に熱心な女の子と出会ってから・・・と書いた。
しかしこの女の子周りの話、必要あったのかな・・・と思ってしまう。
主人公のきっかけにはなったし、主人公も女の子に会いに行っていた。仲良くなって女の子の家を壊されたあたりは女の子から「助けて」と呼ばれるくらいには信頼される仲になった。けど、主人公も女の子も何も変わらなかったのだ。
シロツグが女の子のために何かをすることも無かったし、リイクニの方もシロツグがきっかけで変わることは無かった。
何か変わりそうなイベントは起こったけど、何も変わらなかったのだ・・・・・・。
(wiki見たら、暗殺者を自己防衛で殺害してしまった後レイクニに救いを求めていた・・・と書かれていて、私は初見でそう読み解くことができませんでした。あの押し倒しイベントはそういうことだったのかなあ・・・?)
リイクニの生活は貧しいままで、マナのこともちゃんと見ているのか怪しいままでマナも何か言いたげな目で睨み付けてくるのも変わらないし、誰も見向きもしないビラくばりも最後の最後までやっていた。
このお話、設定もなかなか凝っていて、コミカルさも入っていた序盤から一転、中盤から国と国との戦いとか政府の事情、宇宙軍の開発費のせいで貧富の差が広がっている・・・などなど中々難しいシリアスな背景が明らかになってくる。
しかしそれらの問題は、出てきたけど解決されるわけじゃない。
「そんなのすぐに解決できるわけないじゃん」というのはわかる。すごくわかる。
でもロケットを打ち上げた後、問題は解決できそうな予感、未来は明るいみたいな希望があるわけでもない。どんぱちやっている敵味方が呆然とロケットを見上げていたので、それきっかけで何か人の心が変わるみたいなことは、無かった。
この映画はロケットが打ち上げられて終わり、その後のことは描かれていないからだ。
この「最後どうなるの?」と思わせておいて、どうなるかは描かない・・・ってTVシリーズのエヴァもそうだった気がする・・・。既視感が・・・。
話の途中で「誰からも必要とされていないものなんて無い」という会話があった。
その会話自体は心にビビッときたものなんだけど、この会話から考えると「シロツグの宇宙へ行く仕事を必要としてくれる人は誰なんだろう」というクエスチョンが提示された気がする。
皆から厄介者扱いされている宇宙軍の仕事を必要としてくれる人は誰か。
でもそのアンサーが、ちょっとわからない。
読解力が無いのかもしれない・・・。
ぶっちゃけ最後を見たら、シログツは今の自分の環境、全てから逃げ出したくて、リイクニとの会話をきっかけに宇宙に行くことを思いつき、宇宙飛行士になることを目指したのかなあ・・・とも思ってしまった。
だからロケットの発射成功、宇宙へ旅立って終わり・・・なのかなあ、と。
ここは私の偏見ですが、ぶっちゃけ制作陣はロケットや機械、何かを作ろうとおっさんたちが奮闘するのが描きたかったんだろう・・・と思う。
そちらがメインなので主人公とヒロインのボーイミーツガール要素や大人な背景は、その他、ストーリーが面白くなりそうなポイントはいくつか散らばっていたけど変化が無かったんじゃないかな・・・と思ってしまった。
だから「つまらない」と言われると「そんなこと無いよ!」と言いたいけど、面白いかと聞かれると「う、う~ん・・・」と言葉を濁してしまいそうになる。
そんな評価になっております。